※今回はYouTube動画はありません。
永井です。
「ピアノ生徒が100人以上とか何百人もいる教室ってすごいな、いいな~」
「ピアノ教室を何店舗も経営している先生ってすごいな~」
そんな風に思うピアノ教室の先生は少なくないのではないでしょうか。
私がホームページを作成して集客コンサルをしているピアノ教室さんもですが、ほとんどのピアノ教室では先生が1人でレッスンをして、手一杯になったらそこで満員として募集停止、という体勢で運営されているかと思います。
しかし中には、そこからさらに先生を雇ってレッスンをしてもらい、個人の限界を超えて教室を拡大している先生もいらっしゃいます。
こういう場合には教室全体の生徒数が100人以上になったり、中には数百人なんてピアノ教室さんも出てくるわけですよね。
ということで今回のテーマはピアノ教室のオーナー化、つまりそのピアノ教室の先生が自分で教えるだけでなく、他の先生を雇ってレッスンをしてもらって教室を経営していくことについて、私の見解を率直に語ってみたいと思います。
オーナー化についてはこれまでも脱線的にはちょこちょこ触れることはあったのですが、ズバリこれをテーマにしたことはなかったので、一度まとめて語っておこうと思った次第です。
※1.本記事は、オーナー先生は個人事業主のままピアノ教室を運営し、講師に業務委託する形で規模を拡大していくケースを前提にしています。法人化(株式会社・合同会社など)までを視野に入れた税務・労務の比較や判断については、本記事では扱っていません。
※2.本記事では読みやすさを優先し、業務委託契約の講師の先生についても、便宜的に「雇う講師」「雇われている講師」といった表現を使用しています。ただし、これらは法律上の雇用契約を意味するものではありません。
永井がお客さんの先生にとっている基本的なスタンス
まず最初に、私がいつもホームページを作って集客コンサルをしているピアノ教室の先生方にとっている基本的なスタンスについてお話をしておきます。
私もピアノ教室の生徒を増やすことが仕事である以上、「満員になった後」についてもいろいろな考えや提案できることを持っています。
「満員になりました!やったね!😊」
「じゃあ次どうしましょうか」
↑こういう会話をいつもしています。
満員後のステージというものがあるわけですね。
その中の選択肢の1つに、先生を雇ってさらに教室を拡大していくという、オーナー化があるわけです(べつに満員前からやってもいいですけど)。
これについての私の基本的なスタンスはこうです↓
やりたいなら止めないが、
決して勧めはしない。
なので今回のお話は「私がなぜオーナー化を積極的には勧めないのか」というお話でもあります。
「よし!先生をガンガン雇って教室を拡大させていくぞ!💪」
という先生にとっては、水を差すような「おもしろくない話」になるかもしれないので、ここでページを閉じていただいても結構です。
その気持ちまでも止めさせようという意図ではありませんので、それはそれでどうぞ頑張ってください。
今回のお話はあくまで「オーナー化ってどうなの?」と思っているあたりの先生に対して、私なりにこれまでの経験で見聞きしてきた事をお話しするものですからね。
講師の管理・求人という仕事
まず自分以外のピアノ講師さんを雇う以上、この講師の管理や求人という業務が発生してきます。
これがまた、見てると大変そうなんですよ😅
人の上に立ち、使うことができるか、付いてきてもらえるか
雇った先生に自分の教室の名前でレッスンをしてもらう以上、守ってもらいたい事が色々ありますよね。
オーナー先生の方向性とか、業務上のルールとかがあるでしょうから、それをどうやって聞いてもらうか、浸透させていくかということがあろうかと思います。
一方で、雇われる先生の側も1人の人間であり音楽家なわけですよね。
音楽家という人種には「個性的な人(分かりますよね?😅)」も少なからずいらっしゃるわけで、彼らとどう関係を築いていくかという課題が常にあります。
オーナー先生から見て年上には年上の、年下には年下の良さと大変さなんかもそれぞれありましょう。
1人の講師さんぐらいならまだしも、これが2人、3人と増えていくほど、難しくなっていくように思います。
ピアノ教室をオーナー化するにはこういう「人を使って成果を出す能力(マネジメント能力)」が多かれ少なかれ必要になるでしょう。
これは「ピアノを弾く」「ピアノを教える」とは全く別の能力、別の才能ですよね。
ある人にはあるし、ない人にはないものです。
見ていると「器」という表現もできそうですよね。
こういうリーダー的な資質が、教室の規模に応じて必要になるでしょう。
なので例えば、学生の頃の部活で部長ができたような人であれば、ある程度可能性はあるかもしれませんね。
一方で「部長とか学級委員長とか絶対やだ」みたいな人は、ちょっと手を出さない方がいいんじゃないですか😅ということです。
講師の休職・退職のリスクと求人
雇っている講師さんも人間である以上、仕事をしばらく休みたいとか、退職したいという話になることも当然あります。
出産のため産休育休を取りたい
自身の体調不良により休暇が欲しい
親の介護のため仕事を減らしたい辞めたい
↑こういうことが実際にあるわけです。
「ダメです。やりなさい」とも言えないじゃないですか笑
この時に、それまでその先生が見ていた生徒のレッスンをどうするか?という問題が出てきます。
代わりの先生や次の先生を探さなきゃいけないですよね。
とはいえ、いつもそう都合よくタイミングよく良い先生が見つかるわけでもありません。
見つかるまでオーナー先生が代講でつなぐにしても相当キツイし、都合よく体が空いてるとも限らないので限界もあるでしょう。
最悪、レッスンを一時停止したり、生徒さんにやめてもらうしかない、そういうリスクが常に付きまとうわけです。
大変な心労なんじゃないでしょうか。
※3.講師の先生を業務委託でお願いする場合でも、レッスンの進め方や時間の決め方、報酬の支払い方法などによっては、行政や制度上の判断により「実質的には雇用に近い」と判断される可能性もあるようです。後からトラブルにならないよう、契約内容や運営方法には注意が必要です。不安な場合は、社会保険労務士などの専門家に相談すると安心でしょう。
お金はオーナーの手元にどれくらい残るのか
お金の計算も事前にきちっとした方がいいと思いますよ、絶対に。
ピアノ教室のオーナー化で私がよく見聞きしてきたのは「先生の自宅と実家が近くにある場合」です。
レッスン会場が2つあるので、片方を遊ばせておくのはもったいないという場合ですね。
これならまだ良いのですが、要注意なのは、自宅教室とは別にテナント物件を借りる場合ですよ。
例えば、教室全体の会計がざっくりこんな感じだったとしましょう▼
【例】年間総売上 800万円
自宅教室:
オーナー先生売上 400万円(全取り)
テナント教室:
雇われ講師売上 400万円(オーナーと半々分け)
↑この時、オーナー側に入るテナント教室からの収益は200万円。
もしテナントの家賃が月8万円だった場合、年間で96万円。
水道光熱費など諸々の経費を弾くと、最終的にオーナー側に残る利益は100万円を切るでしょう。
↑これをどう思いますか?
自分のレッスンだけでも大変なのに、テナント教室の集客や講師の管理・求人を、肉体的にも精神的にすり減らしながら必死にやって100万円も残らないとしたら、、、
それって本当に割りに合ってるんだろうか?
って私は思っちゃうんですけど、どうでしょうか。
もちろん↑上記の試算は無数にある組み合わせの1つに過ぎないので、あくまで1つの大まかな参考です。
状況によって様々なパターンがあるとは思いますが、どんな組み合わせであれ事前に必ずきちっと計算しましょう。
そうして割に合うのか合わないのかを考えた上で、やるかやらないかを決めることが極めて大切なんじゃないでしょうか。
ピアノ教室に消費税の納税義務が発生するライン
ほとんどのピアノ教室の先生は、教室の売上から消費税の納税をされてはいないと思います(免税事業者といいます)。
消費税の壁
しかし、ピアノ教室も事業である以上、年間売上の11分の1を消費税として納税する義務が発生する「年収の壁」みたいなラインがあります(課税事業者といいます)。
制度上、この課税事業者になるライン(一般的な目安)は
税込売上が約1,100万円(税抜1,000万円)
を基準として判定します。
ただし、消費税の納税義務は、売上が1,100万円を超えたその年からすぐに始まるわけではありません。
例えば、ある年に売上が1,100万円を超えた場合、実際に消費税の申告・納税が必要になるのは、原則としてその翌々年からになります。
「うちの教室は消費税なんてもらってないんだけど」
と思う先生もいらっしゃるとは思いますが、先生に意識がなくても、日頃いただいているお月謝というのは実質的に税込価格扱いだと、ここでは考えてください。
【例】お月謝が税込8,000円の場合
消費税率10%ならその内訳は
・税抜相当:8,000 ÷ 1.10 ≒ 7,273円
・消費税相当:8,000 − 7,273円 ≒ 727円
という考え方になります。
※4.これは便宜的な計算例です(実際の申告上の処理は別途判断が必要です)。
なので
「うちの月謝収入は1人当たり8,000円だ」と思っていた場合
仮に税込8,000円の月謝で生徒数×12ヶ月という計算をすると
8,000円 × 12ヵ月 ×《生徒数》≒ 1,100万円
↑となるこの《生徒数》が目安となります。
※5.これは便宜的な計算例であり、入会金・発表会費・冷暖房費など他の売上まで含めると実際の生徒数判定は変わります。制度上の課税判定は年間売上ベースです。
ピアノ教室を1人でやっているうちはこのラインを超えることはそうそうないとは思いますが、講師を雇って拡大し始めると、このラインを超える可能性が出てきますよね。
「100万円の地盤沈下」に耐えられるか
年商1,100万円以下で消費税を納めなくていい免税事業者のうちは感覚的には「税込価格が実質的な売り上げだ」「自分のお金だ」という方がほとんどかと思います(というか消費税をもらっている感覚がない)。
なので税込価格の感覚で来た場合「年商1,100万円を超えた翌々年以降は毎年、その約9%(11分の1)が税金として国と自治体に取られる」ということです。
※6.ただしこれはあくまで一般原則です。実際の納税額は、簡易課税か原則課税かの選択、経費構成、仕入税額控除、さらにインボイス制度への登録の有無や、雇っている講師がインボイス登録をしているかどうか等によっても最終的な納税額は大きく異なります。実際の納税額を計算する際は必ず税理士に確認してください。
先ほどのオーナー先生の手元に残るお金の試算は年商800万円でしました。
「その先の注意ポイントまだあるよ」ということですね。
ピアノ教室のオーナー化を考えるとき、この税込1,100万円という「消費税の壁」まで頭に置いておくと良いかと思います。
私も1人の経営者として経験してきた道ではあるのですが「ある年から100万円以上もの収益が地盤沈下する」という感覚は、精神的にもけっこう萎えます(笑)
もう、一歩一歩歩くたびに床がズボッズボッと抜けるような感覚を私は覚えました。
そこからさらに上を目指すのであればこのラインを超えるのも良いと思います。
でも教室のレッスン枠数から限界を計算した時に「これ以上はあまり見込めない」と思われる場合は返って損になる可能性もあるので、このラインを超えないよう慎重になった方が良い事もあるでしょう。
※7.繰り返しになりますが、ここで書いている内容はあくまで一般的な考え方です。教室の規模や運営方法によって最適な判断は異なるため、実際に決める際は必ず税理士にご相談ください。
【実例】埼玉のピアノ教室 S 先生の場合
本記事の公開直後に、実際に埼玉県で2会場のピアノ教室のオーナー経営をされている S 先生から、ご自身の体験談のLINEメッセージをいただきました。
これがまた、生々しい現場の声が満載でして😅
私との1:1トークだけで終わらせるのはもったいない内容だったので、本記事の続編として、この S 先生の実体験に基づいた「ピアノ教室のオーナー化」についてのご意見を紹介しています▼
「自分にとっての幸せ」を総合的に判断しよう
ということでピアノ教室のオーナー化ということについて、私の考えを正直に語ってきました。
オーナー化して教室を拡大している先生を見る時に「すごいな~、いいな~」なんて思うかもしれません。
でも現実にはこういう裏側があるわけです。
どうでしょうか?
あなたはこれでもやってみたいと思いますか?
隣の芝は何とやらで「もしかしたら傍から見るほど良いものでもないかもしれませんよ」というお話なんですよ。
これがわかった上でチャレンジする方を私は止めません。
これはピアノとは別の能力なので、自分の新しい才能を発揮することに喜びや使命感を感じる人もいるでしょう。
そういう経営者肌の方はどんどん頑張って、音楽家の雇用の創出に貢献していただきたいと思います。
でもこれを知らずに何となく「人に働いてもらってお金が入ってくるなんて、おいしそうだな~」と思っている方は「いやいやいや、、、」という話なので、判断材料の1つとして今まで私が見聞きしてきたことの情報提供をすることにしました。
最終的に「オーナー化するかしないか」ということを考える時に、私が大事だと思うのは、結局「自分にとっての幸せ」を自分でどう決めるかということだと思うんです。
今回のお話の通り、オーナー化することで手にできるお金は多少増えるかもしれません。
でもオーナー化することで失うものもたくさんあるはずです。
一方、オーナー化しないことで得られることもたくさんあるわけです。
例えば
自分の練習や勉強
自分の演奏活動
自分の趣味の時間
家族や友人との時間
こういう人生の幸せを左右するプライスレスな事って、いっぱいあると思うんですよ。
何事もバランスなんじゃないでしょうか。
「私は何をもって良しとするか。どこまでで満足するか」
その価値基準を、線引きを、自分なりに総合的に判断することが大切なんじゃないでしょうか。
何かのご参考になれば幸いです。
おしまい😊
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