昨日は東京都内某区のピアノ教室のO先生に月1の電話コンサルを行いました。

電話を始めてすぐ、O先生は、「最近生徒さんが一人辞めてしまった」と、次のようなお話をされました↓

数ヶ月前に入会した3歳の男の子の生徒さんですが、今月の上旬あたりのレッスンから様子がおかしかった。

レッスンに来てもおふざけモードになってしまい

「ピアノひかな~い」

と言ってレッスンにならなくなってしまった。

翌週はお父さんが付き添いで一緒にレッスンにやってきた。

レッスンが始まるとお父さんはお子さんの横に立って、レッスン中もすごく子供に語りかけていたそうなんですね。

もう先生の何倍もお父さんの方が喋っていて、

「あー、そこじゃない!」
「家ではちゃんとできてたじゃない!」

みたいな感じだったみたいなんです。

しまいには息子さんも聞く耳を持たなくなり、「やだー」と言って全然弾かなくなってしまった。

そして週末「今月いっぱいで退会します」というメールが来た。

お母さんはただただ寂しそう、悲しそうだった。

と、↑こんなことが今月あったそうなんです。

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ある程度ピアノレッスンをされて来られた先生なら、「何が起きたのか」ということはよくお分かりかと思います。

ま、親が口を出しすぎて嫌いになっちゃったわけですよね。

何十年もピアノを弾いてきて、長いことピアノを教えてきた先生方にとっては、残念な「あるある」かもしれません。

昔こうして、親や先生からガミガミ言われて

「ピアノが嫌いになりました。つまらなくてやめました」

こういう今の大人のお話はいくらでも聞きます。

とても残念ですよね。

そしてこれが、

「過去の話ではなく、今現在も起きていることなんだ」

というのを、今回のご相談から改めて確認したわけです。

今回のお父さんはピアノの経験はないそうです。

お父さんには当然悪気なんてないし、もしかしたらエールのつもりだったかも分かりません。

自分の息子さんにも大いに期待をして、お父さんなりに良い方向に導こうと必死だったのでしょう。

なぜお父さんがこれをやったかと言うと、「これをやっても事態は悪くなるだけ」という事を知らないからだと思うんです。

自分としては薬だと思っていて、本当は毒だということを知らないから、飲ませ続けてしまう。

そういうことが今回起きたということなんだと思います。

でもこれって、何度も言いますが昔からいくらでもあった話ですよね。

昔からこれによる「ピアノ嫌い」という失敗は山のようにあるし、長くこの業界にいる人にとっては「あるある」かもしれません。

でも肝心なのは、今初めて子育てをしている人、今初めてピアノを習わせようとしている人は、そうした過去の教訓を知らないのであれは、やはり同じことをしようとしてしまう、ということなのではないでしょうか。

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となると、「知っている者の義務」というものがあろうかと思うんですよね。

「保護者に注意をする」とか「保護者を正す」ということは悪でしょうか?

嫌に思われるかもしれません、出過ぎた真似だと思う人もいるかもしれません。

よその家庭の事に口を出すべきではないと思う人もいるかもしれません。

でも私は、「毒と知っていて教えない」方がよっぽど悪いんじゃないかと思います。

地理に疎い人が歩いていたとして、「その先は崖ですよ」という事を知っていて言わないようなものです。

生徒や保護者は素人です。
素人は知りません。

先生はプロです。
プロは知っているでしょう。

「ピアノ嫌い」という過去の教訓を知っている今のプロとしては、それを知らない今の素人さんにきちんと教えてあげること、それが職責(プロとしての義務、責任)というものなのではないでしょうか。

ピアノの弾き方を教えることだけがピアノの先生の仕事ではなくて、こういうところまできちっとコミュニケーションを取って、なるべく事前に教えてあげるということも、ものすごく大事な仕事なのではないかと私は思います。

今回のO先生の生徒さんは残念でした。

これからリカバリーできるかどうかはわかりませんが、今後こういうケースが一つでも減ることを祈るばかりです。

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